MENU

【第22回】ちょっと不憫な香港雑学集

目次

【第22回】香港映画を支えた立役者──サモ・ハン・キンポーという存在

2024年の大ヒット映画『九龍城寨之圍城(邦題:トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)』をご覧になった方は、城砦を乗っ取ろうとする敵役のボスとして登場した、あの太ったおじさんの姿が強く印象に残っているのではないでしょうか。若い方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、彼は単なる太った老俳優ではありません。

太った外見と鋭いアクション

この人物こそ、香港映画を語るうえで避けて通れない存在、サモ・ハン・キンポー(洪金寶)です。日本では1980年代に公開された『燃えよデブゴン』(原題:肥龍過江)で記憶されている方もいらっしゃるでしょう。丸っこい体型とコミカルな演技で広く知られますが、その外見からは想像もつかない切れ味鋭いカンフーアクションを見せ、作中では軽やかな身のこなしで連続バク転まで披露していました。もっとも、彼の立ち位置は単なる人気アクション俳優という枠を大きく超えています。

2024年4月14日、サモ・ハン・キンポーは第42回香港電影金像奨で生涯功労賞を受賞。(Photo : am730 CC-BY 4.0, via Wikimedia Commons
『燃えよデブゴン(肥龍過江)』は現在YouTubeでも視聴できます!(画像をクリック)

七小福と黄金期の中心

サモ・ハンのキャリアは、香港映画の黄金期そのものと重なります。幼少期に中国戯劇学院で京劇を学び、同校の門下生によって構成されたグループ「七小福」の一員として映画界に入りました。同グループは後に香港映画界で活躍する人材を多数輩出し、ジャッキー・チェンやユン・ピョウもその一員でした。スタントや武術指導を経て俳優・監督へと進み、1970〜80年代には香港アクション映画の制作と演出の中核を担いました。俳優にとどまらず、監督、アクション監督、脚本家、プロデューサーとして作品づくりに深く関与し、香港映画のスタイル形成に影響を与えた存在なのです。

画像をクリック!

名作と功績

若き日の彼は、ブルース・リー主演『燃えよドラゴン』のオープニングの試合場面で、リーと対峙する相手として登場しています。果敢に挑むものの、あっさりやっつけられる役どころです。つまり、カンフー映画、そして香港映画の世界的代表作の出発点に立ち会っていた人物でもあるのです。また、ジャッキー・チェンやユン・ピョウと共演した『五福星』に始まる「福星シリーズ」では、笑いと本格アクションを融合させた娯楽映画のスタイルを確立しました。

現役と後進育成

近年もその健在ぶりは衰えておらず、2010年の『イップ・マン2』では洪拳の達人・洪震南役として重厚な武術家を演じ、2024年の『九龍城寨之圍城』でも圧倒的な存在感を放ちました。

創作活動にとどまらず、サモ・ハンの影響は後進の育成にも及んでいます。彼が率いたスタントチームは、単なるアクション集団にとどまらず、新たな映画人を育てる実践の場となりました。ここから多くのスタントマンが俳優や監督へと成長し、香港映画界を支える人材となっていったのです。

現在のサモ・ハンは、香港映画界の生き証人であり、同時に現役のプレーヤーでもあります。その歩みは、過去の栄光だけでは語りきれません。香港映画界にとって、彼は懐かしいスターではなく、今なおその歴史の延長線上に立ち続けている存在なのです。

Photo : Sasoriza / Bryan Chan CC-BY .0, via Wikimedia Commons

この人を差し置いて香港映画を語る事は出来ません!

ポイント

  • 外見と裏腹な鋭いアクションの魅力
  • 七小福出身で香港映画黄金期を象徴
  • 監督・脚本・制作で映画界を牽引
  • 『燃えよドラゴン』でブルース・リーと共演
  • 福星シリーズで笑いとアクション融合
  • 後進育成で映画界に人材を輩出

次回記事は3月25日 公開予定です!

その他の記事はこちらから!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

香港生活20ウン年。年々クリーンに生まれ変わる香港で、いかがわしさとしたたかさの残り香をひっそりと嗅ぎ漁っています。

目次