【第28回】二大スーパーのある風景――百佳と惠康、変わりゆく香港の中で
香港で生活をしていると、百佳(ParknShop)、惠康(Wellcome)の2大スーパーマーケットがいかに生活インフラとして香港の人々の暮らしに深く根を張っているかがわかります。香港ではこの二強状態があまりにも長く続いたため、「スーパー=百佳か惠康」という時代が長らく続いてきました。
惠康の創業と歴史的背景

惠康(Wellcome)は1945年、華人実業家の吳宗偉、劉濂、高燕如らによって創業された、香港でもっとも歴史あるスーパーの一つです。中環の雪廠街に開いた輸入食品店が出発点で、1964年にDairy Farmに買収されました。さらに1972年には、Dairy Farmがジャーディンの傘下となり、以来惠康はジャーディン系の小売ブランドとして発展してきました。創業当時の香港では、肉や魚、野菜は街市(ウェットマーケット)で購入するのが一般的で、セルフサービス方式のスーパーはまだ珍しい存在でした。惠康はセルフサービス方式を広め、近代的スーパー文化を定着させた存在でもありました。
百佳の誕生とAS Watsonの系譜

一方の百佳(ParknShop)は1970年代初頭に誕生しました。第一号店は赤柱に開設されたとされ、郊外型・住宅地型のスーパーとしてスタートしています。百佳を運営するAS Watsonは1841年創業の老舗で、もともとは薬局事業から始まった英国系企業です。ドラッグストアWatsons(屈臣氏)でおなじみの方も多いかもしれません。1977年にAS Watsonはハチソン・ワンポア傘下に入り、1979年には李嘉誠率いる長江実業がハチソン・ワンポアの経営権を取得しました。現在の百佳も長江グループ傘下の主要な小売ブランドとなっています。
両社の高級スーパー業態

この二社、単なる日常遣いのスーパーだけでなく、高級業態もカバーしています。日本食材もある高級スーパー「Taste」「Fusion」「Great」は百佳系、「Market Place」や「Oliver’s」は惠康系のブランドです。
北上消費とネットスーパーの台頭
もっとも近年は、この二強体制にも変化の兆しが見えています。香港市民が週末ごとに深圳へ買い物に行く「北上消費」が定着し、さらにHKTVmallなどのネットスーパーも台頭。従来型スーパーを取り巻く環境は以前より厳しくなっています。
合併報道がもたらした衝撃と不透明な現状
そんな中、2026年春に香港経済界をざわつかせたのが、「百佳と惠康が合併するのではないか」という報道でした。ReutersやFinancial Timesなどによれば、ジャーディンと長江グループが、スーパー事業再編について協議していると報じられました。もし実現すれば、香港小売業界最大級の再編となる可能性があります。
もっとも、その後長江グループ側は売却観測を否定しており、現時点で具体的な統合計画が固まっているわけではありません。実際に統合まで進むかはまだ不透明ですが、香港の小売業界が大きな転換点に来ているのは間違いなさそうです。

両社の合併に関するニュースは My Hong Kong のニュースコーナー「香港UPDATE」でも取り上げています!
看板に隠された香港経済史
見慣れた百佳と惠康の看板。香港の街角では当たり前の風景ですが、その背後には香港人起業家、英国系財閥、そして華人財閥が交錯する、香港経済の歴史が隠れています。毎日の買い物のついでに、そんな背景を少し思い出してみると、いつもの何気ないスーパーの景色も少し違って見えるかもしれません。

スーパーに香港の歴史が見えますね。
まとめ
- 惠康は1945年創業、香港初期スーパー
- 百佳は1970年代誕生、長江系ブランドへ
- 両社とも高級スーパー業態を展開
- 北上消費やネットスーパーで競争激化
- 2026年春に合併報道、再編観測広がる
- 看板の背後に香港経済史が交錯する













