夫の香港駐在をきっかけに、自身のキャリアを再構築しようと決意したマキコさんの香港で個人事業主として奮闘する日々を綴る実録コラム。
海外で働くことに不安を感じている方、日本での経験が通用するのか悩んでいる方にとって、リアルな体験談はきっと参考になるはずです!
【第28回】筆文字アートの見積もり作成。さて、私の時給はいくら?
オファーをいただいたものの、≪当日の絵≫がまったく見えなかった私。想像と妄想を最大限ふくらませ、実地調査や聞き取りなど、ありとあらゆる手を使って、なんとかイメージをつかむことに成功しました。(そのあたりは、ぜひ前回の記事をご覧ください)
前回記事はコチラ!

おかげでようやく見積もり作成へと進めたのですが、そこに再び現れた大きな山。
見積もりを作るということは、自分の仕事の価値を考え、それに金額をつけて提示するということです。

はて?どうやって金額を算出する???
そこで、商業施設での「デモンストレーション」と「販促イベント」、それぞれの仕事内容と見積もりの考え方を整理してみました。
筆文字デモンストレーションとは、どんなお仕事?
日系文具メーカーA社からご依頼いただいたデモンストレーション。
A社の商品を使って筆文字やイラストを実演し、商品の使い方や楽しさを伝えて、販売につなげるお仕事です。
日系文具メーカーA社とのお話はコチラもチェック!


使用する画材は、基本的にA社さんから新品を無料支給。本番前のサンプル制作にも支給していただけました。
なんと、手厚い!
イベント中に使い切れば、追加支給もあります。
ますます、手厚い!!
ただし、文字を書く紙やハガキなどは自己負担。
その分は材料費として見積もりに入れます。
そして、私自身のパフォーマンス費用は、イベントに出演する時間をもとに計算します。
販促イベントの筆文字とは、どんなお仕事?
ショッピングモールやデパートなどで行う販促イベントの筆文字。
こちらは、商品を購入したお客様への「お買い上げ特典」として、筆文字を書いてプレゼントするお仕事です。
御朱印帳をイメージしたノート、日本のうちわ、母の日や父の日のスペシャルカードなど、特典用の品物は商業施設側がイベントのために特別に用意したものが支給されます。
書く方法は、大きく分けて2つのパターン。
- 店舗内のブースで、お客様の希望する言葉をその場で書いてプレゼント
こちらはイベントの出演時間をもとに見積もります。 - 事前に支給された品物に筆文字やイラストを描き、完成品を納品
こちらは、決められた数量を制作するために必要な作業時間をもとに見積もります。
デモンストレーションでは、書くペースや量を自分でコントロールできますが、販促イベントではそうはいきません。
お客様の来店状況に左右されたり、決められた数量をすべて書ききる必要があったりと、作業量を自分でコントロールできないのが大きな違いです。
完成品の納品で一番数が多くてのけぞったのは、うちわのプレゼント、なんと500枚!
表に夏のイラストと文字、裏にお店の名前を書くデザイン。
仮に1枚5分として、
5分×500枚=2,500分=約42時間!
毎日8時間書いても、丸5日間の作業時間が必要です。
でも、実際には書くだけでは終わりません。
書いたうちわを乾かすために広げたり、乾いたものを回収したり。これも立派な作業のうち。
他にどんな作業が必要かも考え、すべてを書き上げるための作業時間を計算します。
そして、その時間に自分の時給を掛けて見積もるわけです。
さて、私の時給はいったい、いくら?
必要な時間は計算できても、肝心の「時給」が決まりません。私の筆文字アートには、いくらの値段をつけたらいいのでしょうか。
そこで参考にしたのは、やっぱり香港の時給相場です。
2019年当時、私が知っていた時給はこんな感じでした。
HK$50:飲食店のアルバイト
最低時給に近い水準。
HK$50:以前働いた日本人向け情報誌のアルバイト
駐在員の奥さんの中には、収入を得ることが制限されている人もいると聞き、「寸志」として支給されていた金額。
時給HK$50だと、牛乳2パックも買えないじゃん……。
我が家の必需品、牛乳。香港は乳製品が高くて、1パックHK$28くらい。それを毎回2本買っていました。
買うたびに「高いな~」と思っていたこともあり、つい、牛乳代に換算して考えてしまいました(笑)。
さすがに、香港の〈最低時給〉or〈寸志〉の扱いではちょっと安すぎる気がします。
では、もう少し高い時給は?
HK$70:ヘルパーさん(お手伝いさん)の時給
筆文字のパフォーマンスとは仕事内容が全く違うけれど、この金額は参考にしていいものなのかなぁ。
HK$100:日本人の友達が働いていたカフェの時給
友達はカフェの店員をしながら、メニュー提案もする、という仕事内容で$100にしてもらった、と言っていました。
なるほど。単に働く時間だけではなく、付加価値も時給に反映されるということですね。
だったら、私の筆文字アートにも、技術やパフォーマンスという付加価値があるはず。



それなら、HK$100でもいけるのかしら?
当時のレートで約1,500円。日本の感覚から考えても、それくらいならいいのかな。
でも、高すぎて仕事がもらえなくなったら?
価値があると頭ではわかっていても、実際に自分でその値段を提示する勇気って、なかなか出ないものですね。
そんな葛藤もあったのです。
はて、さて。
私の時給、いくらにしましょうかね……。



次回に続きます。
まとめ
- 見積作成には仕事の価値の金額化が必要
- デモは出演時間を基準に見積もる
- 販促イベントは内容で算出方法が異なる
- 納品案件は作業時間を細かく積算する
- 時給設定に香港の時給相場を参考にした
- 自分の価値に値段を付ける難しさに悩む
筆者プロフィール
中川麻紀子
東京生まれ。転校9回の子ども時代を通じて、人との関わり方や新しい環境への適応力を自然と身につける。飲食業や営業職を経て、チーズとワインの世界に魅了され、ソムリエとチーズプロフェッショナルの資格を取得。講師としても活動する中で、「伝えることの楽しさ」に目覚める。夫の香港駐在を機に退職し、未知の海外生活へ。語学が苦手で、仕事もない状況からのスタートだったが、奇跡の出会いをきっかけに、香港の人々とつながれる新たな仕事を見出して起業。現在、香港在住10年目。
- 縁Joyアート® 代表
- きらめく漢字アート海外認定校 代表
- 友禅和紙クラフトインストラクター
- 切り紙パステルアート®インストラクター
- ワインソムリエ
- チーズプロフェッショナル(チーズソムリエ)
- 静岡英和学院大学非常勤講師(チーズ講座)
Instagram : @studiomk85













