財神がやって来る──香港の旧正月と「財神到」の風景
財神の姿と象徴
香港で旧正月を迎えると、街のあちこちで赤や金色の衣装をまとい、長い黒ひげを蓄えた財神(チョイサン)の姿を目にします。商店の壁に貼られたポスターや、利是(お年玉)の赤い封筒の図柄としてもおなじみです。財神はその名のとおり「財をもたらす神」であり、商売繁盛や富の象徴として広く親しまれています。

財神の起源と多様な神格
財神の起源は、中国の民間信仰と道教にあります。ただし単一の人物ではなく、複数の神格や歴史上の人物が重なって現在の財神像が形成されました。代表的な存在のひとつが、道教の神である趙公明です。彼はもともと厄災を鎮める神として信仰されましたが、後に財運を司る神としても崇敬されるようになりました。また、殷王朝の忠臣とされる比干や、春秋時代の政治家で後に富を築いた范蠡も、財神として祀られることがあります。このように財神は、富と繁栄を象徴する存在として発展してきました。


文財神と武財神の役割
財神には「文財神」と「武財神」という区分があります。文財神は知恵や公正によって富をもたらす存在で、比干や范蠡がその代表とされます。一方、武財神は財を守る力を象徴する存在で、趙公明などがこれにあたります。富は得るだけでなく守ることも重要であるという、商業社会の現実的な価値観が反映されています。


旧暦正月五日は「迎財神」と呼ばれ、財神を迎える象徴的な日とされています。旧正月の期間中、香港では獅子舞(ライオン・ダンス)の一行とともに、財神の衣装を着た人物が店や会社を訪れ、縁起の良い言葉を述べて祝福する光景は、香港の風物詩の一つとなっています。
香港旧正月の風物詩「財神到」
そして、旧正月の香港で必ず耳にするのが「財神到(チョイサン・ドウ)」という楽曲です。この曲は香港の歌手・許冠傑(サミュエル・ホイ)が1970年代に発表した旧正月ソングで、現在も広く親しまれています。許冠傑は広東語によるポップスを普及させた代表的な歌手の一人であり、香港の音楽文化に大きな影響を与えました。「財神到」のメロディは、ビートルズの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」に着想を得たものとされています。親しみやすい旋律と、「財神がやってきて商売繁盛や財運をもたらす」という明るい歌詞が結びつき、この曲は旧正月の定番として定着しました。
この曲は単なる昔の流行歌ではなく、季節の風景として定着しています。旧正月の商店やショッピングモール、テレビで繰り返し流れるそのメロディは、新年の到来を告げる象徴となっており、人々の生活に深く根付いています。
財神は、日本で言うところの大黒天や恵比寿に近い存在といえるかもしれません。いずれも財運や幸運と結びつき、人々の営みの中で親しまれてきました。旧正月の街に「財神到」が流れ始めると、新しい一年の幸運と発展を予感させる空気が、街全体に満ちていくのが感じられます。

香港旧正月の軽快ソング♪街で流れる音に耳を澄ませてみましょう!
まとめ
- 財神は富と繁栄を象徴する神格
- 趙公明・比干・范蠡などが財神像形成
- 文財神は知恵、公正で富をもたらす
- 武財神は財を守る力を象徴する存在
- 旧暦正月五日は「迎財神」の日
- 許冠傑の「財神到」が旧正月定番曲













