【第35回】香港で相次ぐ瞬時電圧低下(Voltage Dip)—企業が備えるべきセキュリティ・BCP対策とは
香港の新界・九龍エリアをはじめとする地域で、10月13日午後1時10分頃、中電(CLP)の高圧送電線(40万ボルト)トラブルに起因する大規模な「瞬時電圧低下(Voltage Dip)」が発生しました。
消防処の発表によると、事故発生からわずか数時間で170件を超えるエレベーター閉じ込め事故および40件以上の火災報知器誤作動が報告され、オフィスビルや商業施設、病院等で大きな混乱が生じました。

香港は世界有数の安定した電力インフラを誇りますが、今回のような電圧低下事故は台風や送電設備の偶発的障害により定期的に発生しています。オフィスや店舗、工場を運営する日系企業にとっても、物理セキュリティおよび事業継続計画(BCP)の観点から見逃せない課題です。
本稿では、こうした電力トラブル発生時に事業所・管理者が留意すべきリスクと、具体的な対策について解説します。
電圧低下(Voltage Dip)がもたらす主なビジネスリスク
完全な停電(Blackout)とは異なり、数ミリ秒〜数秒間の電圧落ち込みであっても、企業のセキュリティシステムや業務インフラには以下のような深刻な影響を及ぼします。
- アクセス制御(出入管理)システムの停止・リセット
- 電子錠やカードリーダーが自動ロック解除(Fail-Safe)または固着状態になり、不審者の侵入リスクや社員の閉じ込めが発生します。
- 電子錠やカードリーダーが自動ロック解除(Fail-Safe)または固着状態になり、不審者の侵入リスクや社員の閉じ込めが発生します。
- 監視カメラ(CCTV)・防犯センサーの録画中断
- NVR/DVRシステムが再起動を起こし、復旧するまでの数分〜数十分間、セキュリティ上の「盲点」が生じます。
- NVR/DVRシステムが再起動を起こし、復旧するまでの数分〜数十分間、セキュリティ上の「盲点」が生じます。
- エレベーター閉じ込めと二次災害
- 安全装置の作動によりエレベーターが緊急停止し、来客や従業員が閉じ込められるリスクが高まります。
- 安全装置の作動によりエレベーターが緊急停止し、来客や従業員が閉じ込められるリスクが高まります。
- 火災報知器の誤作動によるパニック
- 電圧変動によって感知器が異常信号を発し、誤報による避難誘導や警察・消防の出動対応が生じる可能性があります。
企業が取るべき具体的なセキュリティ対策と準備
- セキュリティ機器へのUPS(無停電電源装置)の導入
防犯カメラ、出入管理システム、ネットワークルーターには、必ず適切な容量のUPSを接続してください。数秒〜数分間の瞬時電圧低下であれば、UPSが即座にカバーし、システムのダウンや再起動を防ぐことができます。 - エレベーターの自動着床装置(ARD)の点検
ビルオーナーや施設管理者との確認事項として、エレベーターに「自動着床装置(Automatic Rescue Device)」が備わっているか、定期点検が行われているかをチェックしましょう。電気が不安定になった際に最寄り階まで移動して扉を開ける仕組みが不可欠です。 - 復旧時の過電流(サージ)対策
復旧時に大きな電流が流れることで、防犯用PCや電子基板が破損することがあります。サージプロテクタ(雷・サージ防護器)の設置を推奨します。
事故発生時の即座の注意点と対応フロー
もしオフィスや店舗で同様の電圧低下が発生した場合は、以下の手順で安全を確保してください。
- エレベーター利用の即時見合わせ 揺れや照明のチラツキを感じた直後は、復旧後であっても点検が完了するまでエレベーターの利用を避けて階段を使用してください。
- 安全確認と手動施錠のチェック 電子錠が解放状態になっていないか、オフィス入口や重要保管庫の鍵を手動で点検・確認します。
- CCTV・セキュリティシステムの正常性確認 システムが再起動状態のまま停止していないか、録画が正常に再開されているかをログで確認します。
- 火災報知器作動時の落ち着いた確認 誤作動の可能性を考慮しつつも、まずは実際の火災の有無を確認した上で、館内放送やビル管理会社との連携を行ってください。
おわりに
香港のインフラは非常に高品質ですが、都市型の高圧電力トラブルは100%防ぐことができません。万が一の際に「セキュリティが無効化される」「従業員や顧客の安全が脅かされる」事態を防ぐためにも、日頃からの機器メンテナンスとBCP対応マニュアルの整備を推奨いたします。
Mr. イワミ電気は見えないリスクだからこそ、今一度備えを見直しましょう!
まとめ
- 瞬時電圧低下でも業務停止は起こる
- 出入管理や電子錠が異常動作する
- CCTV録画停止で防犯上の空白発生
- UPS導入でシステム停止を最小化
- エレベーター救出装置の確認が重要
- BCP手順整備と定期点検が不可欠
<著者プロフィール>
Mr. イワミ
香港とアジアの文化に携わりながら、警備のプロとしてリスクを未然に防ぎ安全を守る仕事をしています。
仕事の合間には街を歩いて香港の環境と状況を観察するのが楽しいです。










