
【第2回】香港ビジネスの影:詐欺リスクの多さと対策
このコラムでは、香港生活・香港ビジネスにかかわる安全保障のお話をご紹介します!
香港で起こる犯罪の約7割が詐欺犯罪
2024年にはディープフェイク詐欺が急増
香港はアジアの金融ハブとして実業家に多くの機会を提供しますが、詐欺リスクという大きな課題が潜んでいます。2024年上半期の犯罪件数は45,315件で、前年比5.6%増。特に詐欺は全体の約7割を占め、被害額は膨大です。
オンライン投資詐欺は偽の暗号通貨や株を謳い、数千件が発生。フィッシング詐欺は偽メールで銀行情報を盗み、ビジネスメール詐欺(BEC)は偽の送金指示で企業を標的にします。2024年にディープフェイク詐欺が急増し、例えば10月のロマンス詐欺で27人が逮捕され、被害額は数十億円規模に達しました。旺角など繁華街での投資勧誘詐欺が目立ち、2024年には詐欺関連で数千人が逮捕されました。
デジタルフォレンジックコンプレックスが発足
デジタル化の進展がリスクを増大させています。2021年には、公開Wi-Fiを悪用したNFT関連の盗難事件が世界的に注目され、香港でもデジタル資産の脆弱性が問題となりました。香港警察はこれに対抗し、第1回で紹介した2023年新設のデジタルフォレンジックコンプレックスを活用。デジタル証跡を分析し、詐欺事件の摘発を強化していますが、巧妙化する手口への対応は依然として課題です。
具体的な対策案は?
デジタルセキュリティの強化が不可欠
実業家は取引先や機密情報を扱う際、細心の注意が必要で、特に新規参入者が標的になりやすい環境です。対策として、デジタルセキュリティの強化が不可欠です。
当局側も、2023年に「Anti-Deception Alliance」が発足され、香港警察の商業犯罪局(Commercial Crime Bureau)が中心となり、香港金融管理局(HKMA)や香港銀行協会(HKAB)、そして10の主要銀行と協力して詐欺支払いを迅速に阻止する活動を強めています。
加えて、自衛強化も必要です。例えば
- VPNは香港で合法的に利用でき、通信を暗号化してデータ盗難を防ぎます。特にカフェなど屋外で契約書を送信する際、VPNなら内容が守られます。
- 香港警察のスマートフォンアプリ「Scameter+」は怪しい連絡先を即座に確認できます。
- 二要素認証や取引先の身元確認も効果的です。
サイバー保険の検討も視野に
現地の企業活動では信頼できるパートナーと組み、急な投資話には慎重に対応することが重要です。
サイバー保険も注目されており、例えば東京海上日動火災保険や三井住友海上火災保険は、香港でサイバー攻撃による損失や責任をカバーするプランを提供しています。日系企業として信頼性の高い選択肢です。
香港のビジネスチャンスは魅力的ですが、詐欺リスクへの備えが成功の鍵です。第1回で紹介した安全性とインフラの強さを活かしつつ、デジタルと現実の両面で警戒を怠らない姿勢が求められるでしょう。
「香港ビジネスの影」のポイントまとめ
- 詐欺の急増: 2024年上半期45,315件、詐欺が7割、被害額膨大。
- 多様な手口: 投資詐欺、フィッシング、BEC、ディープフェイク詐欺が主流。
- 現地リスク: 旺角など繁華街で投資勧誘詐欺目立つ、2024年逮捕者数千人。
- デジタル脅威: 2021年、公開Wi-FiでのNFT関連盗難がベンチマーク。
- 当局の対応: 2023年デジタルフォレンジックコンプレックスで詐欺摘発強化。
- 対策ツール: VPN(合法利用可)で暗号化、スマートフォンアプリ「Scameter+」で確認。
- 保険の活用: 東京海上日動火災保険や三井住友海上火災保険など日系提供のサイバー保険で損失軽減。
- 実践策: 二要素認証、取引先確認、信頼できるパートナー連携。
次回、第3回では、香港のデジタルフォレンジックを日本の事例と比較し、その役割とビジネスへの影響を探ります。詐欺対策の新たな視点にご期待ください。
<著者プロフィール>
Mr. イワミ
香港とアジアの文化に携わりながら、警備のプロとして安全を守る仕事をしています。施設やイベントの特性に合わせたセキュリティ計画を立て、リスクを未然に防ぐことに力を入れています。日本のきめ細やかな視点とグローバルな感覚を活かし、現場から管理まで堅実に対応。仕事の合間には街を歩いて周囲の状況を観察したり、新たな改善点を見つけたりしています。あなたの安全と目標を一緒に守るパートナーになれれば嬉しいです。
