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【第31回】ちょっと不憫な香港雑学集

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【第31回】台風シーズン到来――香港の街を止める『シグナル8』

そろそろ香港にも本格的な台風シーズンが到来します。台風は例年5月から11月頃にかけて香港へ接近しますが、とりわけ7月から9月は大型台風が接近しやすい時期です。この季節になると、人々の会話によく登場するのが、「シグナル8(Signal No.8)」というワードです。

香港独自の熱帯気旋警告信号の歴史

香港では、日本のような「暴風警報」ではなく、「熱帯気旋警告信号(Tropical Cyclone Warning Signals)」という独自の警報制度が採用されています。その歴史は古く、1884年、英国統治時代に香港天文台が港に出入りする船舶へ危険を知らせるために導入されたのが始まりです。当時は、昼間は旗や図形、夜間は灯火を掲げ、さらに台風接近時には大砲の空砲で危険を知らせていました。

現在の警報体系とシグナル8の意味

現在の警報はシグナル1、3、8、9、10の5段階です。シグナル1は台風の接近を知らせる警報、シグナル3は平均風速41~62km/hの強風、シグナル8は63~117km/hの烈風または暴風が予想される、または吹いている場合に発令されます。シグナル8が発令されると、学校は原則として休校、多くの企業でも出勤停止などの対応が取られ、公共交通機関でも運休や減便などの影響が生じます。さらに烈風や暴風が著しく強まるとシグナル9、ハリケーン級(平均風速118km/h以上)の暴風では、最高レベルのシグナル10が発令されます。

社会が止まるシグナル8の影響

高層ビルが密集する香港では、強風で外壁材や窓ガラス、看板、工事資材が飛散したり、樹木が倒壊したりする危険が高まります。シグナル8は、こうした危険を避けるため、社会全体が台風モードへ切り替わるトリガーとして機能しています。もっとも、企業の休業が法律で義務付けられているわけではありません。香港政府労工処は、従業員の安全を最優先に、台風時の勤務や帰宅に関する方針をあらかじめ定めるよう企業へガイドラインを示しており、その結果、多くの企業では出勤停止や在宅勤務への切り替えが行われる一方、病院や公共交通機関など市民生活を支える業務は継続されます。

シグナル8は規制モードの入り口。シグナル10になるとMTRも線路が露出している区間は運行が止まります。

なぜ番号が1・3・8・9・10なのか

ところで、「なぜシグナル2や5がないのだろう」と不思議に思ったことはないでしょうか。実は、これらの番号は、昔は実際に存在していました。20世紀前半には、風向きによって異なる番号が割り当てられ、シグナル5~8は「北西」「南西」「北東」「南東」から吹く烈風を表していました。その後、制度の簡素化が段階的に進められ、強風警報は現在のシグナル3に、烈風警報は風向きを「8NW」「8SW」「8NE」「8SE」で示すシグナル8へ整理されたため、現在の「1・3・8・9・10」という、一見すると不思議な番号体系になったのです。

140年続く香港の防災文化としてのシグナル8

シグナル8は、単なる臨時のお休みではなく、140年以上にわたり香港の人々の命と暮らしを守り続けてきた防災の仕組みです。リモートワークが普及した現在では、シグナル8でも在宅勤務で業務を継続する企業は少なくありませんが、それでも、台風が近づくたびに人々が天文台の発表を気にし、そわそわし出すのは、今も昔も変わらない香港の台風シーズンの風物詩と言えるでしょう。

香港の夏と共に訪れる季節の風景ですね。

まとめ

  • 香港の台風警報は独自の「熱帯気旋警告信号」
  • シグナル8で社会が台風モードに切替わる
  • 学校休校・企業は出勤停止や在宅勤務へ
  • 強風で高層ビル周辺の危険が高まる
  • 警報番号は歴史的経緯で1・3・8・9・10に整理
  • 140年以上続く香港の防災文化の象徴

次回記事は9月2日 公開予定です!

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この記事を書いた人

香港生活20ウン年。年々クリーンに生まれ変わる香港で、いかがわしさとしたたかさの残り香をひっそりと嗅ぎ漁っています。

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