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【第19回】ちょっと不憫な香港雑学集

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【第19回】香港島を行き交う「叮叮」──街とともに生きる世界最多の二階建てトラム

特別塗装トラムの登場

最近、香港島を走るトラムで、思わず目を引く車両を見かけた方も多いのではないでしょうか。キャセイパシフィック航空の創立80周年を記念し、歴代の機体カラーをまとった特別塗装トラムが登場しました。173号、174号、11号、3号の4両が、それぞれ異なる世代のキャセイ機を再現し、高層ビルの谷間を「滑走」するように進む姿は、いかにも香港らしい光景です。

このトラムを運行しているのが、香港電車有限公司(Hong Kong Tramways Limited)。1904年に営業を開始し、100年以上にわたり香港島北岸を走り続けてきた二階建て路面電車です。街の変化に合わせて改良は重ねられてきましたが、基本的な構造や運行は今も大きく変わっていません。

世界最多の二階建てトラム

現在、香港のトラムは約165両の車両を保有・運行しており、運行中の二階建てトラムの保有数が世界最多として、ギネス世界記録にも認定・登録されています。世界の多くの都市で、二階建てトラムが保存車両や観光用途に限られるのに対し、香港では今も一日あたり十数万人が利用する市民の足として活躍し続けています。

路線は筲箕湾から堅尼地城(ケネディタウン)まで香港島北岸を東西に貫き、跑馬地を回る支線を含む構成で、総延長はおよそ16キロ。自動車と同じ道路を走るため事故が多そうに見えますが、実際には比較的安全な交通機関として知られています。最高速度が時速40キロ程度と控えめで、大きな事故が起きにくく、万が一の場合でも被害は限定的です。現在では信号制御や車両改良も進み、さらに安全性が高められています。

市民に愛される叮叮、街を彩る広告

香港で単に「電車」と言えば、基本的にこのトラムを指します。また、市民の間では親しみを込めて「叮叮(ディンディン)」と呼ばれています。発車や注意喚起の際に鳴らすベルの音が「叮叮」と聞こえることから自然に広まった呼び名が、そのまま定着した愛称とされています。

トラムは広告媒体としても非常に優秀です。運賃収入だけでは大きな利益を生みにくい一方、車体全体を使った全面ラッピング広告は重要な収益源となっています。低速で市街地を走り、視認性が高く、写真や動画にも映りやすいことから、観光、金融、保険、映画、IT、小売、医薬品・食品といった分野の広告や、各種イベントの告知などに幅広く活用されています。

幸運のクラシカルトラム

全てのトラムには車両番号が付けられており、トラム好きの間でも有名なのが車両番号120。戦後のクラシカルな内装や構造を色濃く残した特別な車両で、木製の座席や窓枠、手動操作が多い旧式の運転系統を今も維持しています。このため運転できるのは専用の資格を持つ運転士に限られており、出会えると縁起がよい「幸運のトラム」として知られています。

何もかもが目まぐるしく、スピーディな印象のある香港で、ひときわゆったりと街を行き交う「叮叮」──大都市のスピード感と、この路面電車が刻むゆっくりとした時間とのコントラストが、香港という街の奥行きを感じさせてくれます。

まとめ

  • キャセイ80周年特別塗装トラム登場
  • 香港電車有限公司が1904年から運行
  • 約165両保有で世界最多二階建てトラム
  • 路線総延長16キロ、安全性も高い交通機関
  • 愛称「叮叮」、市民の足として親しまれる
  • 車両番号120は幸運のクラシカルトラム

市民に愛されるトラムは今日も香港の街並を彩っているのです。

次回記事は2月11日 公開予定です!

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この記事を書いた人

香港生活20ウン年。年々クリーンに生まれ変わる香港で、いかがわしさとしたたかさの残り香をひっそりと嗅ぎ漁っています。

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