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【第18回】ちょっと不憫な香港雑学集

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香港「三大銀行」の話──ただのメガバンクにとどまらない特異性

新年ということで、今回は少し景気のいい話題を。

香港の三大銀行

出典:HONG KONG TOURISM BOARD

香港で「三大銀行」と言えば、HSBC(匯豐銀行)、中国銀行(Bank of China)、スタンダード・チャータード銀行の三行を指します。香港には世界中の大手銀行が集まっていますが、この三行は単なる巨大銀行ではありません。民間銀行でありながら紙幣を発行できる、特別な存在なのです。

紙幣発行を直接担う

通常、通貨は国の中央銀行が発行します。日本であれば日本銀行、米国であればFRBです。しかし香港には、いわゆる中央銀行が存在しません。その代わり、香港金融管理局(HKMA)が通貨制度全体を管理し、三大銀行が紙幣発行を担うという、世界でも珍しい仕組みが採られています。

これは米ドルを裏付けとするカレンシーボード制度に基づくもので、紙幣発行額と同額の米ドルをHKMAに預託することで、はじめて香港ドル紙幣の発行が認められる仕組みです。

三行それぞれの役割と歴史的背景

HSBC

三大銀行の中核を担ってきたのが、1865年創業のHSBCです。上海と香港で同時に設立されたこの銀行は、植民地期香港の金融インフラを事実上築いてきた存在と言えるでしょう。長らく事実上の「中央銀行的な役割」を果たし、政府決済や外貨準備の実務を担ってきた歴史もあります。

スタンダード・チャータード銀行

スタンダード・チャータード銀行は、実はHSBCより早い1859年に香港で業務を開始しています(当時はチャータード銀行)。インド・中国貿易を背景に発展した英国系銀行で、政治色が比較的薄く、国際商業銀行としての性格が強いのが特徴です。

中国銀行

出典:WIKIMEDIA COMMONS

中国銀行は1912年に中国本土で設立され、香港にも早くから拠点を置いてきましたが、紙幣発行銀行となったのは1994年です。返還を目前に控えた時期であり、香港の主権移行を象徴する出来事として受け止められました。

風水を背景とする景色と逸話

中環(セントラル)の中心部に三行が並び立つ光景は、金融都市香港を象徴する圧巻の景色です。この一帯は風水的にも重要な場所とされ、九龍半島から流れてきた「気」が、ビクトリア・ハーバーを越えて集まる地点と考えられてきました。こうした背景から、銀行ビルの配置や形状には、風水を意識した工夫が随所に見られます。

Photo : IQREMIX CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

象徴的な逸話として知られているのが、HSBCが中国銀行タワーを「砲台で狙っている」という説です。中国銀行タワーの鋭角的な外観が、風水上「気」を乱すものと受け止められ、それに対抗するかのように、HSBC屋上の作業用クレーンが大砲のように向けられている──そんな話が広く語り継がれてきました。真偽のほどはさておき、香港らしい想像力に富んだエピソードとして定着しています。

「産地直送」のライシーで旧正月を

旧正月が近づくと、三大銀行はライシー(紅包)用の新札を求める人々で賑わいます。三行が自ら紙幣を発行する香港では、新年に出回る新札はまさに「産地直送」。鮮度抜群の札束を手に、その背後にある金融都市・香港の物語に思いを巡らせながら旧正月を迎えてみるのも、一興かもしれません。

さすが金融国際都市、香港ならではの雑学ですね!

まとめ

  • 香港三大銀行は紙幣発行権を持つ
  • 中央銀行不在、HKMAが制度管理
  • 米ドル裏付けのカレンシーボード制度
  • HSBCは事実上の中央銀行的役割
  • 中国銀行は返還前に紙幣発行開始
  • 銀行ビル配置に風水的要素が反映

次回記事は1月28日 公開予定です!

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この記事を書いた人

香港生活20ウン年。年々クリーンに生まれ変わる香港で、いかがわしさとしたたかさの残り香をひっそりと嗅ぎ漁っています。

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