大埔火災で注目された竹製足場への誤解
先般、大埔で起こった大火災の報道で世界中に知れ渡った香港の「竹製の足場」について、一部の海外メディアでは火災の延焼原因ではないかと取り上げられ、誤解を招くような報道もありました。これについて香港では個人や団体からSNSなどで世界へ向けて、正しい理解を求める発信が見られました。
香港にあまり馴染みがない海外の方々にとっては、先進都市の香港で竹製の足場を使用していることは意外だったかもしれませんが、香港の環境に適しているからこそ現代に至るまで使用されていた背景があります。

香港に根付く竹足場の歴史と利点
竹の足場「竹棚」は広東省から香港へ広まった建築技術で長い歴史があり、イベントなどの会場設営から高層マンションの建設まで、香港では様々な建築現場において使用されています。竹や金属など素材を問わず、足場を組むことを「搭棚」「築棚」と言いますが、香港では竹で足場を組むことを指しています。
竹の足場は香港土産のポストカードにもなるほど香港ならではの風景です。高層ビルがひしめく香港では再開発やビルの修繕など、日々あちこちで大規模な建築作業が行われており、8割を占める現場で竹の足場が使用されています。竹素材のメリットとして、安価で軽量、柔軟なため狭い場所でも組みやすい、現場に合わせ長さを切るなど加工がしやすいこと、解体や撤去がしやすいこと、高温多湿な香港で湿気にも強く劣化しにくい、などが挙げられます。
文化遺産と安全確保、金属足場への移行
そして伝統技術は文化遺産としての面もあります。竹の足場を組むには「搭棚師」と呼ばれる専門の職人の手が必要ですが、近年は職人の減少や高齢化が懸念されていました。やはり熟練工でないと足場の崩落の恐れもあり、昔のように師匠から弟子へ受け継ぐこともままならないため、安全確保を念頭に香港政府が金属製の足場へ段階的な移行を推奨・義務化を進めている最中でした。
ちょうど今年3月、公共事業で新たに建築する場合は、金属製の足場を50%の比率で使用を義務づける方針を出していましたが、今回の件を受け、金属製の足場への移行を計画よりも前倒しで進めることになりました。それを受けて建築業界では職人の雇用が懸念され、また文化的遺産として残すべきだという声もあります。
まとめ
- 大埔火災で竹足場に誤解報道広がる
- 香港では竹足場が長い歴史を持つ
- 高層建築含む現場の8割で竹足場使用
- 竹は安価・軽量・湿気に強い利点あり
- 熟練職人不足で文化継承に課題残る
- 政府は金属足場へ移行を前倒し決定
(記事提供:H.S. Planning 2025年12月15日掲載コラム)














