
【第3回】香港のデジタルフォレンジックと日本の事例の比較
このコラムでは、香港生活・香港ビジネスにかかわる安全保障のお話をご紹介します!
香港に誕生した「フォレンジックセンター」
「デジタルフォレンジック」がホットキーワードに
最近、日本では著名人絡みのスキャンダルで、削除されたデータがデジタルフォレンジックにより復元され、注目を集めています。この技術は詐欺対策でも重要な役割を果たします。
香港は金融ハブとして魅力的ですが、2024年上半期の犯罪45,315件のうち約7割が詐欺で、デジタル技術が脅威を増しています。この記事では、警備・防犯の視点から、香港のデジタルフォレンジックを日本の事例と比較し、実業家が知るべき役割と限界を解説します。
正式名「デジタルフォレンジックコンプレックス」
香港警察は2023年7月にデジタルフォレンジックコンプレックスを設立しました。この施設は、詐欺やサイバー犯罪の証拠を分析します。
2024年の詐欺事件は約31,720件で、たとえば2024年10月のディープフェイク詐欺(27人逮捕、被害36億香港ドル)では、AI音声解析で犯人を特定しました。2021年の公開Wi-Fiを悪用したNFT盗難や、VTuberを装った偽配信告知詐欺(nikkeimatome.com、2025年4月)でも証拠を収集しました。
しかし、詐欺の手口が巧妙化し、すべての事件を解決するのは困難となっております。

日本では民間の解析技術として普及
一方、日本ではデジタルフォレンジックが企業の自己防衛に活用されています。2018年のフジテレビのデータ漏洩事件では、約22万件の個人情報が流出し、フォレンジック技術で漏洩経路を特定しました。2023年の推定では、民間企業の約半数が何らかのフォレンジックツールを導入済みです。
香港と日本は、AIでデータを分析する点で共通ですが、目的が異なります。香港は警察が詐欺摘発に使い、2024年に約1,500件のサイバー犯罪で証拠を確保しました。一方、日本は企業が漏洩予防に注力しております。
デジタルフォレンジックは事後対応に優れますが、詐欺を未然に防ぐことが大切です。第2回で紹介したVPNや二要素認証でデータ盗難を防ぎましょう。日本の事例から、ログ監視や社員教育も効果的です。また香港では、こうしたデジタルフォレンジックの活用が進み、詐欺対策が強化されています。今後ますますビジネスの信頼性が高まるでしょう。
まとめ
- 2024年上半期、犯罪の約7割が詐欺
- デジタル技術の悪用:AI・ディープフェイク詐欺が拡大
- ディープフェイク詐欺約36億香港ドルの損害が発生
- 香港のデジタルフォレンジック:2023年設立の専門機関が証拠収集
- 日本のデジタルフォレンジック:企業の約半数がツール導入済み
- 香港と日本の対策の違い:香港は摘発重視、日本は民間防衛策
- デジタル防犯対策:VPN、二要素認証、ログ監視が重要

最大の防犯は日常生活のひと手間から!
<著者プロフィール>
Mr. イワミ
香港とアジアの文化に携わりながら、警備のプロとして安全を守る仕事をしています。施設やイベントの特性に合わせたセキュリティ計画を立て、リスクを未然に防ぐことに力を入れています。日本のきめ細やかな視点とグローバルな感覚を活かし、現場から管理まで堅実に対応。仕事の合間には街を歩いて周囲の状況を観察したり、新たな改善点を見つけたりしています。あなたの安全と目標を一緒に守るパートナーになれれば嬉しいです。

