第6回:2025年、変わる“働く価値観”──若手世代のリアルな選択
若手世代が選ぶ「働き方」とは?
「給料が高いだけじゃ、仕事は選べない」──そんな声が、Z世代やミレニアル世代の間で広がっています。
JobsDB発表の「HK Jobseeker Salary Report 2025」によると、91%が何らかの形で個人生活よりも仕事を優先する傾向があると回答する一方で、74%の回答者は「仕事と私生活の境界を設けることが重要」と認識しており、51%はそれが難しいと感じています。
働く価値観の変化
若手世代が重視するポイントは、以下のように多様化しています:
- 柔軟な働き方(リモート・フレックス)
- 職場の人間関係や文化
- スキルアップや成長機会
- ワークライフバランス
報酬や肩書きよりも、「自分らしく働けるか」「職場に共感できるか」が重要視される傾向です。
離職しない理由とは?
レポートでは、離職しない理由や報酬が平均以下と感じているが転職を希望しない理由として以下のような回答が多く見られました:
- 現職の業務量や勤務時間が適切
- 同僚・上司との関係が良好
- 会社の財務状況が安定している
- 柔軟な制度が整っている
つまり、「居心地の良さ」や「安心感」が職場への愛着につながっていることがわかります。
企業に求められる姿勢
回答内容を見てみると、若い世代に選ばれる企業になるためには、以下のような取り組みが求められます:
- 社員の声を反映した制度設計
- キャリア支援やメンタリングの充実
- 働きがいを感じられるミッションの共有
単なる「待遇」ではなく、共感と成長の場としての職場づくりが鍵となります。
まとめ
- 若手世代は給与より働き方を重視
- 仕事優先しつつ私生活との境界を意識
- 柔軟な勤務制度や職場文化を重視
- 離職しない理由は居心地と安心感
- 企業は社員の声を制度に反映すべき
- 共感と成長の場づくりが選ばれる鍵
HRエキスパート:JH Partners 杉本光弘さんのコメント

コロナ後もリモートワークはホットトピックですが・・・
コロナ過で、多くの企業がリモートワークへの対応を余儀なくされましたが、コロナ過が明けた後はワークスタイルが分散化している傾向にあります。
業種や職種によってリモートワークを継続する、あるいはハイブリッド(出社とリモートワークの組み合わせ)にする、あるいは全出社に戻すといった様に、業務の効率性、結果を見ながら分かれている状況です。
一方、求職者においては、コロナ禍の間にリモートワークに慣れたことで、コロナ明けでの転職ではリモートワークを希望する方が増えている状況です。
価値観の変化が起きたという事はありますが、ことリモートワークに関しては、企業側としては現実問題、出社した状態と比べた際に、効率、結果が良いのはどちらかという点が重要であり、良い人材のリテンション、獲得のためといえ、ここは無理に合わせる必要性はないと考えます。
また、求職者側においても、特に経験が浅い段階においては、リモートワークに拘った転職活動はあまりお勧めしません。実績を持つ人や経験豊富なシニアから学べる機会が多い中で、リモートワークに固執すると自身の成長の鈍化に繋がるリスクが大きいと考えられるからです。将来的な成長を考える上で、リモートワークはあくまで自分が成熟した時の選択肢の一つとして、考えた方が良いと思います。
スピード感あふれる時代において重視するべきことは?
とはいえ、事実、価値観の変化が進む中、優秀な人材の獲得とリテンションのためには、当シリーズの第2回でも触れたように迅速かつ柔軟な対応が必要でしょう。
フレックスタイム制度の導入や、業務効率や成果に影響を与えない範囲での限定的なリモートワーク、スキルアップやキャリアの機会を明確に提示すること、社員の声や競合状況を考慮して制度を再検討すること、透明性のある評価制度の確立などが必要です。市場や組織の状況に応じて調整が必要であり、変更すべき点と変更すべきでない点を区別し、検討することをお勧めします。
求職者におかれましては、経験が浅いうちは、目先の待遇や快適さや効率よりも、自己成長に必要な要素を重視して仕事を選択することをお勧めします。その結果、将来的な選択肢の拡大や良い待遇の獲得に繋がる可能性を高める事ができます。私自身、サポートさせて頂いた方々の中でも、目先の待遇だけにこだわらず、成長にフォーカスした結果、キャリアチャンスや想定以上の給与、昇格の機会を得られたケースを見てきました。
3回にわたり、自身の経験に基づいて、企業や候補者の皆様の意思決定や行動に一助となるよう、寄稿させていただきました。少しでも何かのヒントや助けになれば幸いです。
激動するスピード感あふれる時代において、皆様と共に成長し、発展すること、そしてそのサポートを提供するために努力することを再確認し、この寄稿を締めくくりたいと思います。何かお困り事、相談がございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

最後に
この連載では、香港で働く人々の「今」と「これから」を、データを通して見つめてきました。給与、転職、海外勤務、そして働く価値観──どのテーマにも共通していたのは、「自分らしく働きたい」という思いです。
変化の激しい時代だからこそ、働き方も、キャリアの築き方も、ひとつではありません。この連載が、読者の皆さんにとって、自分の働き方を見つめ直すきっかけとなっていたら嬉しく思います。

これからも、あなたらしい選択を。















