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【経済コラム】香港、8月からステーブルコイン新制度

目次

暗号資産ハブを目指して

香港政府は近年、暗号資産(仮想通貨)を積極的に支援する姿勢を見せています。

暗号資産は中央銀行や政府によって発行されるのではなく、ブロックチェーン(デジタル台帳)と呼ばれる技術を基盤に、分散型ネットワーク上で取引・管理されるデジタル資産です。香港はアジアの暗号資産ハブ化を目指しており、関連するライセンス制度や投資家の保護措置、インフラ整備を積極的に進めています。

ビットコイン(BTC)をはじめ、暗号資産は現在アクティブに取引されているだけでも1万~2万種類あります。国や地域の取引所によって取り扱う銘柄が異なり、特定の銘柄の取引が制限されていたり、取り扱いが無かったりします。

主な銘柄と特徴

銘柄特徴
ビットコイン(BTC)世界初の仮想通貨
イーサリアム(ETH)スマートコントラクト機能を持つ
アバランチ(AVAX)高速な取引、柔軟なネットワーク設計
チェーンリンク(LINK)分散型オラクルネットワーク
ソラナ(SOL)高速取引・低手数料の次世代ブロックチェーン
リップル(XRP)国際送金の効率化、金融機関での利用が期待
ステーブルコイン(USDT, USDC, DAI)法定通貨に連動し価格が安定

香港の暗号資産の歴史

香港の暗号資産の歴史を振り返ると、近年急速に発展しているのが分かります。

年代主な動き
2009年ビットコイン登場。香港でも一部投資家が取引開始(海外取引所経由)
2013〜2016年中国本土が規制強化 → 香港は振興を推進
2017〜2019年詐欺的なプロジェクトの増加から金融管理局(HKMA)、証券先物委員会(SFC)が暗号資産取引所に対しライセンス制度導入、香港を拠点とする暗号資産取引所の設立が進む
2020〜2022年規制明確化、投資家保護・市場安定化へ。登録制度導入
2023年6月個人投資家向けにBTC・ETH取引解禁。中央管理型取引所にSFCライセンス義務化
2025年1月16日ライセンス取得プロセス簡略化(三者契約方式)
2025年8月1日ステーブルコイン発行者向けライセンス制度施行
  • 2009年、ビットコインが登場すると世界的の関心が高まり、香港でも一部の投資家により取引が行われましたが、海外の取引所を通じた取引でした。世界各国において暗号資産についての規制はまだほとんどありませんでした。
  • 2013年~2016年、中国本土が資金の海外流出を警戒し暗号資産を締め出す一方で、香港は暗号資産の振興を前向きに進めました。
  • 2017年~2019年、詐欺的なプロジェクトの増加から金融管理局(HKMA)、証券先物委員会(SFC)が暗号資産取引所に対し規制を導入しライセンス制度ができ、香港を拠点とする暗号資産取引所の設立が進みました。
  • 2020年~2022年、暗号資産に対する規制を明確化し、投資家の保護や市場の安定を図るための措置が講じられるようになりました。取引所の登録制度が始まると、香港から移転するプロジェクトも見られました。
  • 2023年6月より個人投資家向けにビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)などの暗号資産取引を解禁する新ライセンス制度を導入しました。一部の取引所やサービスプロバイダーにライセンス制度を義務付け、香港で中央管理型仮想資産取引所(VATP)を運営するには、証券先物委員会(SFC)によるライセンスが必須になりました。
  • 2025年1月16日、新たなライセンス取得プロセスが導入され、2段階だった外部評価が1段階に簡略化されました。契約はSFC、申請者、外部評価者の三者間になりました。
  • 2025年8月1日、ステーブルコイン発行者向けに新ライセンス制度が導入されました。

ステーブルコイン新ライセンス制度について

2025年5月21日に立法会で「ステーブルコイン条例案」が可決し、2025年8月1日より「ステーブルコイン条例(穩定幣條例)」が施行され、同日よりライセンスの申請受付が開始されました。ステーブルコインは価格が安定するよう米ドルなどの法定通貨と固定(ペッグ)することによって一定の価値を維持する暗号資産です。

この条例により、香港でステーブルコインを発行する企業、香港ドルに連動するステーブルコインを香港内外から発行する者、香港で大衆向けにマーケティングや広告を行う者は、ライセンスの取得が義務付けられます。今後は金融管理局(HKMA)からライセンスを取得した業者だけがステーブルコインを発行できるようになります。最初のライセンス発行は2026年1月予定と発表されています。

ライセンス取得には最低払込資本金が2,500万香港ドル以上あること、準備資産による裏付けがあること、香港内に実質的なオフィスがあること等の細かい要件があります。8月1日から6か月間は経過期間が設定されており、既存のステーブルコイン発行者で規制要件を満たす安定発行者である場合は暫定ライセンスが付与されます。

🏦 2025年8月1日施行

  • 2025年5月21日:立法会で「ステーブルコイン条例案」可決
  • 2025年8月1日:「穩定幣條例」施行、ライセンス申請受付開始

対象となる事業者:

  • 香港でステーブルコインを発行する企業
  • 香港ドルに連動するステーブルコインを香港内外から発行する者
  • 香港でマーケティング・広告を行う者

ライセンス取得要件:

  • 最低払込資本金:2,500万香港ドル以上
  • 準備資産による裏付け
  • 香港内に実質的なオフィスを保有
  • 実名登録(KYC)義務
  • 保有者の身元確認義務

その他:

  • 初回ライセンス発行は2026年1月予定
  • 2025年8月1日から6か月間の経過措置あり
  • 規制要件を満たす既存発行者には暫定ライセンスが付与される

香港は世界初のステーブルコイン発行に関して規制を持つ暗号資産の市場となります。新規制では実名登録(KYC)が必須で、発行者にはステーブルコイン保有者の身元確認が義務付けられます。これにより機密やプライバシーの原則に反するとの懸念もあり、香港の競争力を阻害するのではという声もありますが、金融管理局はマネーロンダリングやテロ資金対策には必要不可欠と説明しています。

香港の暗号資産市場の魅力

各国の暗号資産への規制が異なる中、香港は規制の明確さ、ライセンス制度の充実で、暗号資産の市場拡大に前向きなスタンスを取っています。そして世界的な金融センターである香港では、キャピタルゲイン税が課されません。

日本であれば利益の半分以上を税金として納税しなければなりませんが、暗号資産の取引によって出た利益は基本的に非課税です。これは投資家にとって非常に有利な環境で、大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ

  • 香港が暗号資産ハブ化を推進
  • ステーブルコイン発行に新制度導入
  • ライセンス取得に資本金等の要件
  • 実名登録と身元確認が義務化
  • 初回ライセンス発行は2026年予定
  • 暗号資産利益は香港では非課税

(記事提供:H.S. Planning 2025年8月15日掲載コラム

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この記事を書いた人

広東語が好き、おうちで香港料理に挑戦中。

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