大埔・宏福苑でレベル5級の火災
- 香港返還以降では2度目のレベル5火災
11月26日(水)、香港・新界大埔に高層住宅地「宏福苑(Hung Fook Court)」で、香港の火災階級で最高度に近い「レベル5」の大規模火災が発生しました。この火災により、12月2日には消防士1人を含む死者数が151人に達しました。現場からは焼損が激しい遺体も見つかっており、身元の特定に時間を要するとも発表されています。
レベル5の火災は極めてまれであり、今回の大埔火災は17年ぶり、さらに1997年の香港返還以降では2度目とされます。高層住宅が密集する香港においても、今回のような死傷者多数の火災は異例の事態として受け止められています。火災後、香港政府や消防当局は原因究明とともに、出火階や延焼経路、非常階段・スプリンクラーの作動状況を調査しています。
- 社会全体を覆う衝撃と追悼、悪質な詐欺も
火災後には香港全土で3分間の黙祷が捧げられ、行政トップや政府高官が犠牲者を悼みました。街頭や公共施設には追悼の花束が供えられ、SNS上でも哀悼のメッセージや、亡くなった家族・友人を偲ぶ投稿が多く見られています。
火災現場近くにはボランティアや地域団体が集まり、衣料品や日用品の提供、炊き出しなど、被災住民を支える草の根の支援も広がっています。
一方で、この悲劇につけ込む形で、被災者や善意の寄付者を狙う詐欺も報じられています。RTHKの英語記事では、慈善団体を装って寄付金を集めようとする者や、被災者に対し「特別支援金の手続き代行」などと称して金をだまし取ろうとする事例が伝えられています。政府や警察は、市民に対し公式な窓口や認定団体を通じて支援や寄付を行うよう呼びかけています。
- 被災者救済と補償、医療費免除など政府の対応
政府は大規模火災発生直後から、被災者の救済に向けた一連の支援策を発表しています。RTHKによると、宏福苑の住民約2,400人以上が他の公営住宅や一時的なシェルターなどの提供が開始されており、生活再建に向けた住居の確保が急がれています。
さらに、政府は火災被害者に対して、一世帯あたり5万香港ドルの生活手当を支給する方針を示しました。この生活手当は、家財の喪失、収入源の途絶、通院や移動にかかる費用など、急激に増大した経済的負担を軽減することを目的としています。
加えて、火災で亡くなった外国人家事労働者や作業員の遺族に対しても弔慰金が支給されることが報じられています。
医療面では、「政府は宏福苑の住民の医療費を免除する」との方針が示されました。火災による負傷者や、煙を吸い込んだ影響で健康被害が生じた住民が、経済的理由から受診をためらうことのないよう、公立医療機関を中心に医療費を公費で負担する措置です。身体的な外傷だけでなく、トラウマや不安など精神的ケアの必要性も指摘されており、長期的にはメンタルヘルス支援の拡充も求められています。
今回の大埔・宏福苑火災は、多数の死者を出した未曾有の都市災害として、今後の住宅政策や防災計画、社会保障制度の見直しに大きな影響を与えるとみられます。
- 主な支援金窓口はこちらから

日中関係悪化、百貨店の影響は限定的
中国外務省は11月14日、日本への渡航自粛を自国民に呼びかけました。高市総理の台湾有事発言を受け、日本国内で在日中国人への犯罪や襲撃事件が増加しているとし、安全環境の悪化を理由に警告しています。これによりインバウンド市場への影響が懸念されますが、百貨店各社の11月売上高速報では影響は限定的でした。エイチ・ツー・オー(阪急百貨店、阪神百貨店)では免税売上が後半に減速したものの、松屋や高島屋、三越伊勢丹では大幅な悪化はなく、Jフロント(大丸、松坂屋)は免税売上が前年比約6%増加しました。国土交通省が発表した2025年冬期国際定期便は週6,240.5便と過去最高で、成田や関西、福岡など主要空港でアジア路線を中心に増便が顕著です。渡航環境の不透明さが残る中、観光・流通業界は今後の動向を注視しています。
香港10月小売、2年ぶり高成長
香港政府統計処(Census and Statistics Department)が2025年12月1日に公表した暫定値によると、香港の10月の小売売上高は前年同月比6.9%増となり、約2年ぶりの高い伸びを記録しました。売上額は352億香港ドルで、前月(313億香港ドル、同6%増)から大きく拡大しました。電気製品・耐久消費財が24.6%増と最も伸び、宝飾品・時計などは9.5%増、食品・酒類・たばこは6%増、百貨店商品は5.8%増でした。一方、自動車・部品は20%減、燃料8.7%減、漢方薬6.6%減など落ち込みも見られました。政府報道官は、10月の小売回復は「勢いを増している」と述べ、消費者心理の改善と訪問客増加が今後も支えになるとの見通しを示しました。なお、1~10月累計では売上額は前年と同水準でしたが、数量ベースでは1.5%減少し、オンライン売上は9.5%増でした。

