【第14回】香港の森を駆ける絆──Oxfam Trailwalkerがつなぐ挑戦と連帯
香港で人気のアクティビティといえば、ハイキングやトレイルランニング。丘陵地が多く自然に恵まれた地形、街からの抜群のアクセス、そして整備されたルート網がそろい、初心者から上級者まで幅広く親しまれています。年間を通じて大小さまざまなトレイル大会も開催されていますが、その中でも最も代表的なイベントのひとつが「Oxfam Trailwalker Hong Kong」です。

英国陸軍の訓練演習が起源
香港の都市の喧騒を離れ、緑豊かな山岳地帯を舞台に100 kmを走るこのトレイルイベントは、1981年に英国陸軍のエリート部隊 Queen’s Gurkha Signals Regiment が訓練演習として実施した100 km走破が起源です。1986年に Oxfam Hong Kong が共催を始め、一般参加が可能になりました。現在では、チーム4人1組で100 kmを48時間以内に走破する形式で、互いに励まし合いながら山中を進むチャリティレースとして定着しています。

都市では味わえない大自然を走り抜ける

コースは香港を代表する「MacLehose Trail」に沿い、スタートは西貢の北潭涌(Pak Tam Chung)、フィニッシュは屯門のハロウ・インターナショナル・スクール(Harrow International School)。急峻な登りや稜線、渓谷、時には雨に洗われた山道など、都市では味わえない風景が続きます。山岳地帯を舞台にしたこのチャレンジは、体力だけでなく“仲間との絆”や“困難を共に乗り越える力”も問われるものです。
香港のスポーツ・チャリティ文化を象徴する存在

2013年には優勝タイム10時間58分という驚異的な記録が生まれました。2016年には登録チーム数が1,295に達し、Trailwalkerは香港のスポーツ・チャリティ文化を象徴する存在となりました。参加費やスポンサーシップ、募金を通じて集められた資金は、アジアやアフリカ地域の貧困層支援や緊急救援に充てられています。トレイルを走るという行為が、「自分のための挑戦」から「誰かのための行動」へと変容し、個と世界のつながりの物語を生んでいるのです。
香港ならでは-都市と自然の交差

もうひとつの魅力は、香港ならではの“都市と自然の近接”。 高層ビル群のすぐ背後に広がる緑の山々を駆け抜ける光景には、“都市と自然の交差”が感じられます。参加したランナーや歩く人たちが、夜明け前の森で黙々と歩き、霧の中を進む姿は、ビル街に象徴される「表の香港」とは異なる、静かで力強い香港の姿を映し出しています。
多層的な成り立ちを象徴する“生きた文化”
香港の街並みを背に、山を越え、夜を走り抜ける。Trailwalkerは単なるスポーツイベントではありません。
「都市と自然の交差」「挑戦と連帯」の物語であり、香港という都市の多層的な成り立ちを象徴する“生きた文化”と言えるでしょう。
2025年 Oxfam Trailwalker Hong Kong
今年の大会は11月28日(金)〜30日(日)に開催予定。もし友人や同僚が出場するなら、チェックポイントでのサポートチームとして補給や装備交換、食事準備などを手伝ってみるのも一案です。そして、もし心が動いたなら――来年、自らの足でこの100 kmに挑んでみてはいかがでしょうか。


自然と都市が調和した香港を感じられる歴史ある大会ですね!
まとめ
- 100kmを48時間以内に走破する大会
- チーム4人で挑むチャリティレース
- MacLehose Trailを舞台に開催
- 都市と自然が交差する風景が魅力
- 募金は貧困層支援や緊急救援に活用
- 参加者同士の絆と連帯が試される














