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【Close Up】氷室利夫さん:梅干し売りからマグロ商社へ 日本食普及の立役者

梅干し売りからマグロ商社へ

氷室利夫氏は、Zen Foods株式会社の代表取締役会長であり、日本食普及の親善大使として知られる。香港で「秋祭り」を主催し、日本文化の伝道師とも称される彼の道のりは、失敗と気づきに満ちたサクセスストーリーだ。

1989年、山一証券の駐在員として香港に赴任した氷室氏は、夜景に魅了され「お金持ちになろう」と退職。しかし、現実は厳しく、助けてくれる人もわずかだった。32歳で独立後、梅干しやお茶を売る日々を送りながら、「プロじゃないと失敗する」と痛感。36歳で「俺は何のプロなんだ?」と自問した。

日本食普及の立役者

転機は2003年。金融業の延長で知り合った若者の「マグロ漁船」の話をきっかけに、マグロ専門商社を香港で創業。周囲の反対を逆手に取り、誰も手がけない分野で勝負した。SARS後の日本食ブームと香港の好条件を活かし、2007年には「Dayゼロ」を実現。朝、豊洲で仕入れたマグロが夕方に香港で味わえる仕組みを築いた。

現在、創業20周年を迎え、売上1000億円を目標に掲げる氷室氏。「日本食は世界に通用する文化」と語り、香港の人口増を見据えてさらなる拡大を目指す。苦難を支えたのは「生きてるだけで丸儲け」という言葉と仲間たち。そして、「自分に言い聞かせる意地」が彼を突き動かす。環境を活かし、気力を持ち続けた男の物語は、まだ続く。

氷室 利夫氏
Zen Foods Co., Ltd.代表取締役会長・香港日本料理店協会会長


1985年山一証券に入社。 1989年、北京での1年間の留学を経て来港、香港のビジネス環境に惹かれる。1995年退社、2003年香港初のマグロ専門商社として創業。まぐろに特化した輸入事業からスタートし、鮮魚と野菜の卸売や飲食店も展開。 2007年に超低温コンテナを利用したコールドチェーン(Dayゼロ)を確立し、現地での寿司や刺身などの生食文化の爆発的な広がりに貢献。2015年には、日本ワイン専門の輸入販売会社を設立。販促やイベント企画など、日本ワインの認知度を高める取組を行う。毎年10月に香港で行われる「踊ろう秋祭り」の発起人であり主催者でもある。

(2025年3月12日(水)に開かれた、第208回香港和僑会定例会「第3回奈津子の部屋:香港日本料理店協会の氷室利夫会長をゲストに!」にて収録。一部を書き起こし)


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この記事を書いた人

香港大好き20余年。マラソン超遅ランナー

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